君待ちて無常の闇に身を浸し 降るや虫の音叢雲の月
滴塵033
本文
君待ちて無常の闇に身を浸し 降るや虫の音(ね)叢雲の月
形式 #短歌
カテゴリ #5.自然・風景
ラベル #月 #虫 #夜 #無常 #自然現象
キーワード #闇 #無常 #虫の音 #叢雲 #月
要点
無常を意識する夜の自然と心の描写。
現代語訳
君を待ちながら、無常の闇に身を浸す。降るように虫の音が響き、雲間の月が見える。
注釈
無常の闇:時間の儚さや世の変化を象徴。変化し続ける、先の見えない夜。無常の世のメタファー。
身を浸し: 孤独と不安の中に深く沈んでいる状態。
虫の音(ね):秋の夜の情景。寂しさや孤独感を深める要素。
叢雲の月:雲間から見える月、悟りの象徴。
解説
自然現象を通して無常の感覚と感情を重ねる。月と虫の音が心理状態を映し出し、待つ心情を一層際立たせる。
深掘り_嵯峨
滴塵016に続く、「君待ち」の孤独を、仏教的な無常観と結びつけた歌です。
待ち続ける時間は、単なる孤独な時間ではなく、すべてが移り変わる「無常の闇」の中に身を置くことです。その中で聞こえる「虫の音」や、雲に覆われた「叢雲の月」は、寂しさとはかなさを増幅させます。
待つという行為自体が、無常という現実と向き合う修行のような意味合いを帯び、私的な情愛の苦しみが普遍的な真理の苦しみへと昇華されています。